FNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFN

           メール・マガジン

      「FNサービス 問題解決おたすけマン」

================================================================

    ★第083号       ’01−03−16★

================================================================

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

     急がぬ人

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

●「狭い日本、

 

そんな急いでどこへ行く?」てな交通標語で抑えなければならないほど、

この国が驀進していた時代がありました。

 

近ごろは足も遅く、鼻先がどっちに向いているのか分からないような人

が増えましたが、それでも我々、セカセカした人種ではあるらしい。

 

駅前のアチコチで通行を妨げている迷惑自転車も、その副次現象の一つ。

都内ならひと駅まるまる歩いても10分くらい。 その間のどこかなら、

線路から離れた分を加えても15分はかかるまい。 それを縮めたくて

 

自転車を使う。 だがもちろん、ゼロにはならない。 せいぜい数分の

節約、、 たったそれだけの時間を稼ぐために、朝から晩まで自転車を

放置し、ひと様に迷惑をかける。  ひどいジコチュウ、、

 

 

そんな人だから、電車1台、悠々とは見送れない。 「駆け込み乗車は

危険です!」も何のその。  <その人の定刻>があるらしい。

 

その<定刻>が集中する時間帯を避け、通勤者時代の私は<早め>専門

でしたが、たまには遅れることもある。 当然、来る電車は えっ?

この上まだ乗るの? とタジログような混雑。 しょうがない、乗ろう、

と決心が固まるまで、つい何台も見送ってしまうのが常でした。

 

純日本人の私でもそんな具合ですから、ほかの文化圏から来た人の目に

どう映るか、、  人間的じゃない、文明国じゃない、、エトセトラ。

 

「その人が何を望んでそうしているのか?」は人間行動を観察する際の

切り口の一つですが、そうまでして駅へ急ぎ、ギュー詰めに耐えてでも

仕事に遅れないようにする人というのは、多分、、

 

よほど働きたくて堪らないからだろうね、、 では冗談にもならないが、

異文化圏の人々にはそう思えてしまうかも知れない。 日本人ハタラキ

モノ説の大誤解も、あるいはそんなところからも生じたのでしょう。

 

*   *

 

困るのは我々のセセコマシイ性格、、 と書きかけて、セセコマシイ?

 

辞書で確かめると<性格>の意味では、「こせこせして、ゆったりした

ところが無い」とある。 が、第一義的には「狭苦しい、狭くてゆとり

が無い」、即ち<空間>の表現。  やはり島国のせいだったか、、

 

人間の大きさは、住んでいる空間の大きさで決まるものでもあるらしい。

伸びやかな人を<大陸的>とか言うからな、、 と思っているとき、

 

**********

 

 

 

●「スモーク・シグナルズ」

 

という映画をNHK衛星第2で観ました。 インディアン居留地の二人

の若者が主人公。  フラッシュ・バックを多用して、<心の軌跡>を

描いた地味な映画。

 

海岸沿いの大都会とは全く異質で人影まばら、ただただ広く静寂な大陸

アメリカの奥。  その先住民にして今や少数派。  理不尽にも僻地

へ押しやられた歴史の悲しみを超え、ささやかなユーモアに生きる人々。

 

 

クレジットによればNHK制作協力、何かの賞を得たとも言うのだから、

そういい加減な作品ではない、、と思いたいが、やや悲しげで淡々たる

ストーリー。 ご覧にならなかったとしても、特にご損は無かったろう、、

 

けれども1カ所、何とも懐かしい記憶が誘い出された場面、ありました。

幼なじみの少年が二人、長距離バスで旅に出ます。 途中、軟弱な方が

<インディアンらしい>風体に改めることになり、そのための買い物で、

バスを待たせてしまう、、 らしい。

 

説明的な科白は何も無かったが、バスのドア脇に立って手持ち無沙汰の

(頑固そうな白人の)運転手が映し出され、そこからカメラが左へパン

すると<硬派>が申し訳なさそうに立っている、、

 

まあ、西部劇的寡黙さの演出です。 運転手はほんのちょっと首を振り、

仕方ないな、まあ、ごゆっくり、Take your time. の感じ。  と、

 

角の店から、イメチェンした<軟弱>が、それまで着ていた服を詰めた

(らしい)紙袋を抱え、はにかみながら急ぎ足で戻ってくる。

 

やれやれ、と<硬派>が軽く息をつく。  運転手は無言で背中を向け、

ステップに足をかける、、 

 

それだけの場面、普通なら「どうと言うこと無い」でしょうが、私には

古い記憶を甦らせるのに十分でした。  思わず、

 

40年前だけどサ、私もあんな情景に出会ってネ、、 と傍らの女房に

言いかけて、、 止めました。  その理由はまたいずれ別の機会に。

 

*   *

 

1964年、初めてのアメリカ旅行で、私は<グレー・ハウンド・バス>を

大いに利用。 99ドルで99日間、全米をカバーした路線のどこへも

行けるというサービスがあって、足代の節約になったからです。

 

特に東部、中西部は街から街、細切れの日程だったので、バスは好都合。

ルイビルにGEの冷蔵庫、レキシントンはIBMの(新発明的ボール・

ヘッド式)電動タイプライター、そしてミリング・マシンのシンシナチ、、、

と工場見学を重ね、ある夜オハイオ川に映る月を眺めながら走り続け、

 

白々と夜が明けた、、 のだが何かおかしい、、 バスが停まったまま。

<白々>は、視界十数メートルの濃い川霧のせいでもありました。

 

だから走れないのか?  と、未だよく開かない目を窓の外に向けると、、

バス発着所など全く無い地目山林風の道ばたで、客を拾うところでした。

 

それは若いビジネスマン。 察するに、旅に出るセールスマン。 だが、

バスを待っていた客としては妙な感じ、乗り込んで来る様子が無い、、

 

後ろ向きに立ったままなのです。 目を凝らすと、彼の首には細い腕が

巻き付いている、、  おやおや。 お別れの口づけ、真っ最中でした。

 

漸くかいま見た彼女は、ビショビショ泣き濡れた一見幼な妻風。 いか

にも心細げな表情で彼にぶら下がり、離そうとしない。 もちろん彼の

方は、ヨワッタナアの顔付き。  事実上、立ち往生。

 

チラとバスを見上げたり、妻の泪を拭いてやったり、口づけを返したり、

なだめたり、、。  やがて次々、ほかの乗客もこの有様に気付いたが、

心優しくも、誰も文句を付けたりはしなかった。 すぐ、また寝入って

しまう。  ユックリやれよ。Take your time.  の寛大さ。

 

じゃ、運転手は? ハンドルに手を置いて前方注視。  出るぞ、早く、

てなこと、言いもしない。  彼また、どうぞ Take your time. の感。

 

車内の薄暗さと窓外の薄明るさ、本来動くはずの人も車も静止した視界。

聞こえるのは低いエンジン音だけ、という聴覚的にもモノクロの世界、、、

 

やがて彼女も観念。  彼は小声で運転手に感謝を述べながら乗りこむ。

バスはフォグ・ランプの黄色い光で霧のカーテンを分けつつ、緩やかに

走り始め、、 私も再び朝のまどろみに、、 

 

映画的な平和、とでも申しましょうか、それまでの人生では見たことも

無かったシーンでした。  フーン、やはりコッチは違うんだな、、

 

*   *   *

 

その後アチラも変わったに違いないが、それはいわば程度の問題、ゼロ

ではない。 しかしコチラは Take your time. なんてゆとり、ゼロの

国柄。 ゼロに何割掛けようが載せようが引こうが、ゼロに変わりなし。

ああ、この違い、どこから?

 

**********

 

 

 

●<盆栽>を少々カジった

ことがあります。 ある日たまたま上野の美術館で大展示会、たちまち

虜になって帰りには2鉢、もう手に提げていましたよ。

 

サーモスタットに命を賭けていた時期だったのが不幸、この優雅な趣味

は長続きしませんでした。  が、、

 

盆栽で得た知識を当てはめると、前記<違い>の説明が付けられるかも

知れません。  ヒントは「土の量」、盆栽に仕立てて行く時の。

 

 

鉢に植える時は、まだ自然の木。 だから葉にしても普通のサイズです。

しかし、鉢に植えられたことによって、その木が依存する土の量は大変

僅かなものになります。

 

やがて季節は巡って葉は落ち、次の春新芽を吹くと、、 そこに生じた

葉は、一回り小さくなっているのです。  それは<僅かな土>のせい。

その葉もやがて落ち、次に出る葉はさらに小さくなる、、

 

頃合いを測って、さらに小さい鉢に植え替える。 土の量はさらに減る、、

この繰り返しで、長年のうちに<盆栽>になる、、

 

一式完全無欠でありながら、サイズはミニ。  だから、水をやるにも

<霧吹き>使用。 日当たり、風通し、きめ細かい<過保護>的面倒見

が必要だけれど、報われればワンダフル! だが、何とも箱庭的。

 

*   *

 

アメリカの国立公園で、景観と向かい合って感じたのは、その点でした。

「これに比べちゃ、箱根も尾瀬も<箱庭>だあ、、」

 

仕方ないことではあるが、何しろスケールが違う。  基本的に地面の

大きさ、<土の量>が違う。  そこに生えるもののサイズが違う。

 

あのヨセミテの巨木!(その名が<セコイヤ>杉とは!)  マツ(?)

ボックリの長さが1尺(我ながら古いねえ!)もありましたぜ。

 

アイダホのジャガイモも巨大だったし、オハイオのカボチャも500kg。

ああいうのを見たり食ったり、そして広々した土の上で生活していたら、

そりゃあ人間も大きくなるさ、、

 

かどうか、たしかにセセコマシくなかった。 前記二人の運転手もバス

の客たちも、無言ではあったが心は Take your time.  寡黙な寛大さ

を感じさせました。  <包容力>、、 でしょうね。

 

その時の私は何につけ不慣れな旅行者。  先々でトチリやモタツキを

演じました。  すると、柔らかく声がかかる。 Take your time.

ずいぶん気持ちが救われましたよ。

 

*   *   *

 

「ごゆっくり、、」と言えるのは何故?  先を見ているから、ですな。

 

映画の運転手なら、「男一人が着替えるのに、どれほどもかかるまい」。

オハイオの運転手は多分、「もう3遍もキスすりゃ、気が済むさ、、」。

 

人がそうしている目的は何なのか、、 その手段は、、 などがざっと

分かれば、その先、見当を付けて外れることは滅多にありません。

 

なら、人ひとりの気が済むことの方が大切、、 が、Take your time.

せき立てれば無用の緊張が生じ、結果はむしろ良くないかも知れない。

 

*   *   *   *

 

<同じ日本人同士>なら、さらに先の見当も付きやすかろう。 だが、

「ごゆっくり、、」は滅多に無い、ひたすら「早く、早く、、」の国。

 

思うにその原因は、思考努力を欠いたジコチュウの主張、でしょうな。

それをするならこれだ、が強すぎて、そうしない相手を許さない狭量。

 

前号では我が国民性を<情緒的>としましたが、それは<理性的とは

言えない>の意。  Mind で Think して行動するより、 Feeling に

走りがち。 思慮分別抜きの快感優先、ジコチュウは避けられません。

 

Take your time. で見守ってやる度量が無く、すぐチョッカイを出す。

オレがこう感じる以上、お前もそうでなくちゃオカシイ、とか、これ

はこうするのが当然、、 とか。  相手がそれに従えば、ああ愉快。

 

相手のやり方を吟味し、受け容れるべきは、、 なんてアタマを使う

のは疲れる、だから、しない。 そのうち、それが出来ない人になる。

イエスと言わないヤツが煙ったくなる、鬱陶しくなる、、

 

が、ちょっと待った。 本当にそれしか無いのか、無くて良いのか?

別に難しいことじゃないんだ。  MUST、WANT さえ明確なら、それを

達成する案は一つならず浮かぶだろう。  

 

どこかを少々譲っても、帳尻が合うならオレの案でなくても良いじゃ

ありませんか?  それが包容力、ですぜ。

 

*   *   *   *   *

 

間もなく新人受け入れの季節。  彼らの創意を認めるのも、それを

実際やらせてみるのも、包容力。  彼らを<盆栽>に仕立てるので

ないなら、大きく伸ばすつもりなら、、

 

誰よりもまず、リーダーが<タップリした土>になってやらにゃあ、、

 

いかに、成果は出さねばならぬ、時間は迫られている、で気が揉めて

も、そこをこらえて共に乗り越えるのがリーダーの務め。 繰り返し

ますが、大切なのは MUST、WANT の明確化。  そして新人に成果を

保証してやるためのPPA(潜在的問題分析)、、

 

あなたの<心>は広大無辺。  そうしよう、と思い立ちさえすれば、

即<タップリした土>になる方法はあるのです。  で、本日のCM、

 

  Rational Process は、<土>増量、<急がぬ人>のツール!

新人育成の季節に備え、あなたのツールに磨きをかけておきましょう。

 

                         ■竹島元一■

================================================================

FNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFN

                       ■ホームページへ戻る